BL小説★「月に笑う・上下」木原音瀬  [BL小説]

BL小説★「月に笑う・上下」木原音瀬 

げっ!
1か月も放置しておいたら、「村」のほうが 
圏外 になっとったっ!!!!

ショック!!!!

というわけで、ちょっと サブい汗を垂れながら、この記事書いてます。
では、気を取り直して、

新年あけまして おめでとうございます!
本年も、腐国ノ狂王のアンテナに
 ビンビンひっかかってきた 名作達を
逃さずからめとって、どんどんご紹介して参りますので、
今後ともよろしく お付き合いくださいね。

さて。
今年は、辰年ですね。 
そんなわけで、辰にちなんで、……というわけではありませんが、縁起よく辰繋がりということで、背中に龍の彫りモノを背負う男のおはなし、「月に笑う」をご紹介させていただきます。今回、オススメするのは、CDじゃなくて、ノベルになります。

*以下、ネタバレ度100%になってますンで、未読の方は、お気をつけください。

BL小説★「月に笑う・上下」木原音瀬 
tsukini warau.jpg

総合:★★☆☆☆
ストーリー:★★★☆☆
イラスト:★★★★★
H濃度:★☆☆☆☆
腐国ノ狂王点:★★☆☆☆

原作:木原音瀬
イラスト:梨とりこ


++内容紹介++健気攻め×ツンデレ受け。
いじめられっこの中学生「路彦」をひょんなことから助けることとなったチンピラの「山田」。路彦は、山田に妙になついてくる。そして山田はいつしか、路彦とヌキあう間柄に……。
時が過ぎ、山田の所属する小さな組が解散し、山田は新しいボスで、経済ヤクザとよばれるやり手の「惣一」のもとで準構成員として働くことになる。一方、大学生になった路彦は、山田の反対にも耳を貸さず、惣一がらみのやばい仕事に関わりをもちはじめてしまう。
そのことで追い詰められた2人は、逃避行にでかけるが……。
原作が木原先生にしては、わりかし「甘め」のオナハシに仕上がってます。




++感想++

偶然通りかかったyoutubeで、ステキ動画を発見したわたくし。
その方がメイキングされたBL書籍のレビュー動画が、
むちゃ すごかった!
選択書籍良し、映像良し、BGM良し……と
かなりのテクニシャン!
あまりのよしよし尽くしで、巧すぎて……
すっかりわたくし魅せられてしまったのでありますが、
その中でもピカ一だったのが、コレ、「月に笑う」だったのであります。

もう、とにかく、選曲が神!
ピッタンコ~じゃ、あ~りませんかっ!!!
そして、テキストからの的確な言葉の抜粋力と、イラストカットの出し方の巧妙さに
完全に ノックアウト! されてしまったのでありました。

で、思いっきり久々に 萌えたので、
どうしても原作を読んでみたいと強く強く、つよ~く感じ、
気づけば、ヤフオクへと手が伸びていたのでありました。

で。

ようやく届いた「月に笑う 上・下」。
昨晩、無事、完読いたしました。

で、感想はどうだったかと申しますと……。




++ストーリー++

……。正直、ワルくなかったけど、イマイチでしたわ……。

ってな、わたくしの発言に、思わず、

ええええっ!

と、突っ込みを入れてしまった、貴方!

さぞかし、ドン引きされたことと
わたくし、想像に難くありません。

でも、ウソ は 申せません。
辛口に聞こえるかもしれませんが、正直にレビュー書いていきます。

ちょっと、わたくし的にはラストも含めて、かなり不発弾でした。

というのも、

いらん、わたくしの間違った方向への過度な期待 が原因だとはわかってるんですけどね。

youtubeでレビュー見て、その方が抜粋されたイラストとセリフを腐国ノ狂王が、勝手に妄想膨らませて、頭ン中でストーリーを作っちゃってたんだから、
原作とわたくしの妄想との間に開きがあって当然といっちゃ 当然のこと。

でも、正直な話。
ソレ抜きに、小説としてみた場合でも、本当の意味でわたくしが文章にのめり込めたのは、「下」巻の前半部分のみ。「惣一」っていうインテリ変態幹部の登場場面で緊張が高まってきたあたりから。山田が惣一に傾倒していくあたりのくだりだけですかね。あと、山田が追い詰められていくくだり。

だから、「上」に関しては、わたくし的には、まるで不発でした。

で、なにが自分の中の妄想とちがったのかな。
 
と考えてみたんですが……。


そもそも このお話は、2部構成。
上は、路彦 視点。 下は、山田 視点 というふうにできてるんですね。

でも、わたくしの場合、この本が本当の意味で面白くなりはじめたのは、はじめから、というより、「下」の山田視点に移ってからだとおもうんですよね。
「上」だけだと、とりたててイイっていう印象もないんだけど、「下」が登場することによって、始めて、この話の全体に、深みと味わいがでてくると思うんですね。「下」があるから、「上」も生かされてくる、意味をもってくる、というような……。

というのは、ぶっちゃけ、一言でいえば、こういうわけです。

キーワードは、「ギャップ萌え」って点だと思うんですよ。
「上」は、そのギャップ萌えを美味しくいただくための 前菜のようなもの、ということであります。
だから、メインディッシュは、ギャップ萌え効果を引き起こす「下」巻からということができると思います。

その「下」では、読者の心情としては、山田 を追う という形になると思うんですね。
つまり、もっとも多くの読者が感情移入すると思われるのは、山田視点。

で。

「上」では、路彦は、ウブでひ弱な おこちゃま なわけですよ。
だから、「上」のおはなしっていうのは、
まぁ、平たく言えば、心理学でいう「刷り込み」なわけですよ。“カモやアヒルなどの生まれたてのヒナは、初めて見た動くものに追従する“ってやつですね。

そんな、ひ弱なおこちゃまが、 

「下」では、成長して 大人の男になっている。
自分よりも、ずっと 弱くて、小さくて、ガキだとおもっていた奴が、
いつのまにか 自分の背丈を追い抜き、自分を軽々とおぶさることもできるほど力強くなっていることに気づいた時、ハッとする。

ま、ここですわな、萌えポイントは。

エロいことにしたって、包茎で、キスも何ぁんにも知らない ガキだったはずなのに、
逆に、自分がそんな奴の雌犬にされる。

まぁ、ここも、萌えポイントですわな。

つまりですね、ここのギャップ萌えをささえているのは、
路彦の成長 なわけですよ。
山田に関しちゃ、一貫してはじめから最後まで そのまんま。
でも、路彦は ちがう。

大人の男になってる。
自分がずっと優位に立っていると思っていたのに、
いつの間にか、支えられていた。
いつの間にか、頼りにしていた。
いつの間にか、奴 なしでは生きられなくなっていた……

って、トコロでしょ?
わたくしも、youtubeを見た限りでは、そのように想像してたわけですよ。

でも……。

原作では、違ってたんですね。
あ、いえ、おおむねは そうですよ。
原作では、路彦の体とエッチなテクはそうでした。

でも、路彦クン、成長して大人になっても 精神年齢が幼いまま だったんですね。
社会人になっても、 言動が幼い。
そこに、わたくしは、萎えたんですよ、ハッキリ言って!!!!

健気さの演出 ということでしょうけれどね。

健気さ というのは、イコール 言動の幼さから演出されるものばかりとは、
限らないと思うんですよね。
言動の幼さを直接綴るんじゃなくて、総合的に見て、この人って健気だ と
読者の方に感じさせる。 その間接的な方法によって、より、健気さがアピールできると思うんですよね。

だから、わたくしとしては、不発弾だと申し上げたわけです。

ここで、路彦が、精神的にも肉体的にも 大人の男になっていて……。
すべての立場が逆転したようでいて……。
それでも、やはり、路彦には、だめだめな山田しかいない……。

って、ところが、もうちょっと 巧妙に描かれていれば、

(いや、それに関しては、たぶん描かれていたんでしょうけど、伝わってきませんでしたね。それは、多分大人になった路彦が、あまりにも山田スキーな態度を崩さなすぎるからかもしれませんね)

ある意味、大人になった路彦が、もう少し山田の劣等感とコンプレックスを刺激するような、そんな場面があったらよかったのかもしれません。山田を嫉妬させるような、もしくは、路彦の気持ちが自分にないんじゃないか、もしくは離れて行ってしまう……と不安にさせられるようなドキドキな場面があったら、路彦という人物が、より活かされたのかもしれませんね。
いつまでもショタくさくない路彦の登場に、読者は山田ハン同様に、ギャップ萌えを感じ得たのではないでしょうか?

そういう意味からすると、大人にんなった路彦アピールとして、山田が路彦から精神的にもっと追い詰められる場面があったら、(ホラホラ、そういう展開っていかにも木原センセらしいし)
より、わたくし好みな展開ではありましたね。

あ、でも、マッパシーンでは、路彦ハン、なかなか 男前になっておられましたんで、
ドキッといたしました。 これは、よし◎です。

~って、なにいってるんでしょうね。自分でかいていて、わけわかんなくなってきた~。

ああああぁぁあつ、もう。
とにかく、

腐国ノ狂王的には、路彦くんの後半の「精神的面での」男前っぷり不足の残念がなければ、本作、満点★★★★★であったと思うのです。それだけに、ちょい、残念な気がいたしました。

かなり勝手な個人的見解になってしまったので、
不快に思われた方がいらっしゃったら、ごめんなさいね。

あとがきのところで、センセイが、「ラストは何度も書き直した」っておっしゃられていたんだけれど、往々にして、編集者様の手が入らない、原作者様本来のラスト、わたくし個人としては、そちらの方が、とても気になりますね。編集者さまって、結局は商業を意識しているから、作家様の本来の素のアイディアをともすると、商業汚染しちゃったりするんじゃないかと素人のわたくしなんかは、想像するんですね。でも、作家様が最初に出されたラストっていうのが、本来のこのお話のラストだと、わたくしは思うんですよ。

ラストというのは、結局、その小説を読んでくれた人へのご褒美みたいなものでしょ?
長い小説を最後までくじけることなく、途中で放り出さずに読んでくれた、そんな人へだけ捧げられる贈り物ってことじゃないですか。
だから、ラストは作家からすれば、「すべて」だと思うんですよね。どう「オチ」を落すか。
オチの付け方、オチへの持って行き方。読んでくれた読者の皆様に、作者は、どんなオチを用意することができるのか。
これが、作家の腕のみせどころなんじゃないかと思うんです。
それを編集様がぶち壊すなんて、それはもう原作者の作品じゃなくて、編集者様の作品ですよ。
だから、わたくしとしては、本当のオチ、木原センセのオリジナルのオチというのを拝読させていただきたかったなと、あとがきを読んでそう思ったのでありました。
(途中、不適切な表現や言動が含まれておりましたら、ご容赦ください。)


では、気を取り直して、次。



++イラスト++

萌えます。 萌え萌えです。
すごく好きです。

ここにきて、この本に関しては、イラスト萌えだったと判明しました。

そこで 誰も聞きたいとは言っちゃくれねぇが、
わたくしの萌えた イラスト 教えちゃいえぃ!

上227頁。 色っぽいキスシーン。

上265頁。  マッパシーン。山田ハンの表情がエロっ。
下163頁。  涙を見せる山田。セクシーです。

ダイスキーなイラスト
ベスト3
下81頁  惣さまに足で踏みつけられる山田ハンの屈辱シーン。萌え!

ベスト2
下15頁  「君はやっぱりバカだったか……って僕を失望させないようにしてくれよ」とお吐きになられたドSな惣さま

ベスト1
下221  山田ハンのうなじ!!! そして、 路彦の手のほねほね! 素敵過ぎます。

もう、とにかく、イラストは素晴らしいです。

イラストに関しちゃ、不発弾どころか、もう、爆発しまくりですね。
吹っ飛びました。

とりこセンセ、ありがと~!!!!

もう、
このイラストが手元にあるというだけで。
もう、それだけで、
ヤフオクで買ってまで
手元におけて、ほんとうによかった……
私は、この本をヤフオクにかけたりしませんよ、ずっと手元に置いておきます……
と誓い、
幸せな気持ちになりました、わたくし腐国ノ狂王でございました。



++木原音瀬センセ++

木原センセに、本気で感動させられた作品と言えば、超人気小説家集団「Unit Vanilla」の
SASRA 3 江戸編 です。(これに関しては、詳しいレビューを上げてありますので、ここでは内容のご紹介は割愛いたしますが、もしまだの方は、リンクしてみてくださいね)

SASRAは、人気作家さん達が、それぞれ輪廻転生の悲恋をテーマを担当して描きあげたオムニバスで、誰がどの作品を書き上げたかの内訳は、実は公表されておりません。
だから、わたくしが先程、江戸編は木原センセと申し上げたのも、あくまでも ちまたの噂で何の確証はありませんが、わたくしのなかでは、その、ちまたの噂が囁く通り、かなりの確証で、江戸編の作者は 木原センセと睨んでます。

この江戸編は、腐国ノ狂王の過去リストのなかでも殿堂入りした作品で、
わたくしに、未だ、わすれられないほどの感動を与えてくれました。
できれば、原作部門に、最優秀賞を進呈させていただきたいくらいです。
その私の作品に対する称賛の想いは、こんだけBL本があふれているなかでも、異色の光を輝かせていて、未だに色褪せることがありません。

で、他のCDの方でも、「COLD」シリーズ、「美しいこと」、「薔薇色の人生」、「こどもの瞳」、「NOW HERE」、「Don’t Worry Mama」、「牛泥棒」……などなど、皆さまもご存じの通り、数え挙げたらきりがないですね。どれも、★★★★★級の質の良さです。外れがありません(吸血鬼と愉快な仲間たち……以外は)。

その独特のエグめの変わった切れのある視点は、木原センセイ作品の特徴であり、また魅力でもありますし、それが、他の作家さんとは大きく一線を隔し、超人気作家さんであられるゆえんであると思うのです。

そんな作品たちと比べてみると、今回の「月に笑う」は、木原的には、「かなり甘め」な
お話ということになるんじゃないでしょうか。
自殺、ヤクザ絡みの流血沙汰…殺傷ならびに殺人未遂…と、こうして言葉にして挙げてみると、結構エグめではありますが、お話を進行させるための、気にならない程度の軽めな登場ですので、エグめが苦手な方でも比較的、本作は読みやすいんじゃないかと思います。



++ちょっと気になったこと。++

これは、あとがきで原作者様も自らおっしゃられていた通り、随所にちりばめられた 「チ○コ」という山田の言葉遣い。
こんだけ、チ○コ連呼するものといったら、「ちんつぶ」っていう作品が思い当たるけど、それでもやっぱり声優様方がフリトで「いまだかつて、生きていて、こんなにチ○コって連呼したことねぇ」ってだれかおっしゃってたけど、ホント、この作品読んでて、ちょっとそんなことを思い出してしまいました。

よくBL小説で出てくるソレ表現っていうのは、あんまりチ○コってダイレクトに使うことってないですよね。
○○自身とか、ソレとかモノとか、雄とかなんとか……そんな表現が一般的のような気もします。

で、このチ○コという表現の連呼が、非常に新鮮に思われたんですね、わたくしには。
そもそも、男の人って、チ○コっていうんだろうか?
チ○ポか?チ○チ○? それともペ○スだろうか? 

で、なんか気になって、わたくし、ググってみましたのですよ。

そしたら、yahoo!知恵袋に興味深いご回答にHIT致しました。

チ○ポ →大人のモノ。反りくり立ち、貫禄バツグンの威風堂々 それがチ○ポ。
チ○コ→小さいチ○ポの意。チ○コはチンポを蔑んだ言葉。
チ○チ○→毛のはえていないもの。子供のモノ。

だそうです!!! 皆さま、こんなにはっきりとカテゴライズされてたって、ご存知でした?

ということは、山田ハンが路彦に「チ○コ」を連発していたのには、「お前はまだ子供だ」という間接的な心理の表れという、れっきとした根拠があったものだったと実証されました。そう考えると、なかなか奥深い表現方法だったと、いえるかもしれません。

腐国ノ狂王、不覚にも 呼び分け に こんなにはっきりとした使い分けがあったとは、知りませんでした。
いやはや、勉強になりました。

その他、わたしくしの知るところでは、昔韓国人が、「パプリカ」(トウガラシ)って言ってたこととか、あと、西洋人だと大体はペ○スと表現しますが、ドイツ語に限っては、「シュバンツ」(しっぽ)とか、「ピンパル」(子供のモノをさして)とか言ったりもしてますね~。
ま、本当にどうでもいい話ですケド。



++最後に。++

なんだかんだいっても、結構、この作品「月に笑う」を 腐国ノ狂王は 気に入っているのです。
だから、コレ、是非、CD化していただきたい作品なんですね。
音声になったらどんなふうになるのか、是非、きいてみたいですねぇ~。

ツンデレなチンピラの山田 には、誰かな~と考えたんですが、 鈴木達央氏が適役かなと。チンピラということで、神谷浩史氏でもイケルかもと一瞬考えたが、いかがだろうか?

一方、中学生→大学生→社会人 と、その成長っぷりを使い分けなきゃいけない路彦役は、だれが適任かな……と。
「健気攻め」ということで、演技力に信頼のおける羽多野渉氏かな~とも、思ったけど、「COLDシリーズ」での印象が強すぎるため、健気って面で多少被る感じもするので、やはり他の方がいいかしら……と。路彦は、大人になってもまだ正確に幼い印象があるので、ショタも健気も可愛いもイケる、武内健氏が適任かなと。
立花慎之介氏? もしくは、寺島拓篤氏? あたりでもよさそうです。


で、 結論からいいますと、次回、CD化に当たっては、武内健×鈴木達央  ということで、決定[黒ハート]

なんてことになったら、いいんですけど。

いや~、長文にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
こんかいなんか、いろいろ いらんこと 口走ってしまった様な気もいたしますが、
愛情余っての行為と、多少の暴言もご容赦くださいね。

それでは、皆さまにとって 本年も素敵な 腐れ年と なりますように。
腐国ノ狂王


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BL小説 栗本薫「元禄心中記」天の巻+地の巻 [BL小説]

BL小説 栗本薫「元禄心中記」天の巻+地の巻
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総合:★☆☆☆☆
ストーリー性:★★★☆☆
H濃度:☆☆☆☆☆
腐国ノ狂王点:★☆☆☆☆

原作:栗本薫

内容紹介:未だかつてない程、将軍吉綱の寵愛を受けたことで知られる、絶世の美貌を持つ「柳沢保明」との関係を軸に、数々の美童をめぐる心中事件をお届けする、コユイ流血時代モノ短編集。「地の巻」に至っては、かなりエグいですので、要注意。


感想:
++テーマ++
この業界で意外と見かけないのが、「心中」をテーマとしたBL作品である。
なぜだろう?
イマドキ、心中なんて、嘘クサイっていうか、リアルじゃないってことなんだろうか?
なんでもアリの世の中であるから、二人で死ななきゃいけない理由なんて、イマドキ、そうそう転がってはいないのは確かだ。
腐国ノ狂王が、過去、拝聴したBLCD化された作品の中で思い当たる作品っていったら、このラストって、もしかして心中ってことなのかな?って思わせた「個人教授★★★★☆」くらいなものか。
最近拝読したBLコミックでは、「いつか雨がふるように★★★★☆」(国枝彩香)が記憶に新しい。
「心中」って、意外とない「オチ」の付け方なのである。
で。
やはり、ソコに目をつけた、栗本大センセイは流石である。
しかも、それは、お耽美ムンムンの世界。「心中」+「お耽美」と、くれば、テーマとしては、最強コンビである。
実際、本書で紹介されているエピたちは、コユイおはなしばかり。本当に興味深い作品だ。
「イマドキ」なBLモノとは真逆にある本作。およそ「萌え」とは遠いところにある作品です。
そんなわけで一見、相当な「お固い時代モノ」であるようにみえて抵抗があるが、なぁんだ、その実。蓋を開けてみれば、内容は、お耽美というよりは猟奇的なエグいストーリーばっかりで、イマドキの心理ホラーもびっくりなことになってます。

いずれにせよ、作者が流石この世界の大御所だけあって、いまさらながら、本書で「日本のBLの原点」を再確認できる作品です。
“魔性の美童とそれに心惑わされる男たちがおりなす“このテのおはなし。
喰わずもの嫌いにならないで、一度は食しておきたいジャンルであることは間違いないと思います。



++文体。++
BLが、まだBLと呼ばれていなかった、そんな時代。BLというジャンルがまだ、耽美小説と呼ばれていた時代の、栗本薫(中島梓)センセといえばそう、いわばこの世界の古典中の古典。この世界に興味を持った誰もが、一度はその起源を辿ってみたくなるような、そんな先に行き着くところ。まさに、BL界の紫式部?とでもいいましょうか。そんなお方でいらっしゃいますね。
センセイのJUNE時代の小説道場では、現在の人気どころで英田サキセンセ、榎田尤利センセなどなど、そうそうたる作家センセイ方を育てられた、BL界の母的なお顔ももっていらっしゃいますから、頭が上がりません。
でも……。
実は、私。
栗本薫女史の作品を拝読させていただくのは、わたくし本作が初めてでございます。
日本純文学スキー(否、男性スキー)のわたくしでございますので、男性の手による耽美もの(例えば三島由紀夫とかオスカーワイルドとかね)は、国内外作品にかかわらず、過去にけっこう読破いたしておりましたが、女性作家の手によるっていうのは、少女マンガをのぞいては、全くのヴァージンでありました。(漫画もどちらかというとジャンプ系スキーでしたね)

で、前置きはこれまでにして、率直に感じたこと。
それは。
現在のBL小説に染まっている一読者としていわせていただければ、
「あらま~、なんて味気がない文体」
ということである。
題材よし。ストーリーよし。で、脳がエクスタシーを感じないわけないんだけど。。。。
なぜか。。。。味気ない。。。。
ま、解りやすく言えば、文体から萌えが全く感じられないっつーことであります。

一文にあまりにも情報を詰め込みすぎているせいなのか。それとも、「賢く」「お固い」「時代風」な文体が味気なさを感じさせるのか?
まるで、説明文を読んでいるかのようであります。
大先生様の作品に対する意図的な計算?なのかもしれませんが、なにせ、他作品を拝読しておりませんので、このセンセが普段、どんな文体でお書きになるのは、存じませんが。
本書は、読んでいて、疲れる文体であるということだけは、確かであります。
もっと、流れるような、もしくは、くだけた文体で表現することができていれば、充分、脳がエクスタシーを感じ得たと思うんです。
素材はいいのだから、
マッパシーンにしたって、もっとエロく、エロく、エロく、耽美、耽美、耽美に味付けして書くこともできたはず☆
状況はエロいっちゅーのに、エロさが、足りな~いっ!!!!
だから、読んでいて、なーんか、消化不良を起こしてしまう、って感じ。
できれば、せめて、マッパシーンだけでも、文体崩さなくてもいいから、もう少し、「特濃お耽美」を魅せてほしかった。。。。
と。
ちと、残念な腐国ノ狂王なのである。

っーか、本書のジャンルは、BL扱いじゃないのか???



++中身のおはなし。++
で。
やっと中身のおはなし。
中でも、わたくしが★を出してもいいかなと思った作品は、
「心中西国譚(上)」+「心中夢浮橋(下)」★☆☆☆☆である。
京・室町の老舗「加賀屋」の美貌の一粒種「惣三郎」の数奇な破滅的人生が描かれている。
ウブな総三郎は、犯されることによって流血沙汰となり、佐渡へ島流しにあう。そこで、屈強の悪人たちの犬と成り下がり、淫靡の限りをつくした日々を強いられる。。。。そして再び帰京した惣三郎は、魔性の色気を備えた世にもまれな美貌として姿をあらわすことになるのである。しかし、惣三郎は、密かに復讐を心に誓っていた。。。。
と、まあ、こんなかんじ。
大変興味深い。短編ではあるけれど、この作品を骨格に、もっと肉を付け、「一個の生命」として魂を吹き込んでいけば、映画化できそうな感じである。
が。
既述のとおり、文体が、せっかくの興味深いテーマを、ただこの「こ難しい」特濃文章によって味気のないモノになってしまっているのが実に実に残念なのだ。

でも、このエピのエグイラスト。なかなかイイのである。腐国ノ狂王的には、CD化してもよいと思うくらいである。でも、オハナシとして聴ける脚本に書き換えるの、大変そうだけど。。。。BLCDにしては、異色のお耽美CDに仕上がると思うな[黒ハート]

その他のおはなし。
「無明火心中」☆☆☆☆☆ 美貌の弟「数馬」に異常に執着する「一鬼」の狂愛。

「前髪心中」☆☆☆☆☆ 大人たちに汚されながらも、精神的な清らかさと純愛を貫く、美童同士の悲恋の物語。

「くちなわ心中」☆☆☆☆☆蛇に魅入られた狂疾の美童「新太郎」と彼に魅入られた「小四郎」の狂慕の末の悲劇。

「心中油地獄」☆☆☆☆☆ (注!)これはお耽美というよりは、むしろ猟奇的な監禁モノ。多量の流血あり。かなりのエグさであります。あまりおススメは、できません。

「心中乱菊記」☆☆☆☆☆ スリの菊之介が狙った相手は、よりにもよって北町奉行所同心の鬼塚源吾だった。そのことから菊之介は、源吾に脅迫されて関係を結ぶが。。。。
これまた、猟奇モノ。。。。

「小日向心中」☆☆☆☆☆ 美童「粂之助」を付け回す狂気の男の影。やがて粂之助は、その男にとらえられ、犯されるが、実はその男は、行方をくらませていた実父だった。。。。
と、まあ、またもや。。。。な展開です。。。。もはや、萌えのカケラもありません。

「元禄心中異聞 松蔭組秘録」☆☆☆☆☆保明が吉綱に献上するために組織した美童から成る松陰組。初な美童「弥之介」と病弱の「右之助」の初恋が保明の知れとるところとなり、引き裂かれることから始まる悲劇の物語。「黒」保明です。

「元禄心中異聞 椿説沢蛍火」☆☆☆☆☆男女を極めた綱吉が愛し執着した只一人の小姓、主税(=保明)が、晩年を迎え、自らが初めて、綱吉に手篭めにされた当時のエピや、保明の嫉妬を買いたくて、綱吉が、故意にその籠妃と保明の3Pを強要した当時のエピなどを回想する。



++BLと美貌。++
コレを読んでいると、つくづく、「美童に生まれたら悲劇だ!」と思ってしまう。
美しく生まれると、大抵は、誰かの手によって運命を無理やり狂わされ、不幸の道へと堕ちてゆくのがお約束なのだ。
本書を読んでいると、美童って存在は、当時、玩具扱い。「やり殺す」っていうけど、本当に、やり捨て状態の、やり殺し状態。本書は、ほとんど、性の生贄に捧げられた哀れな美童たちの「死」の物語であります。

そもそも、BLの登場人物っていえば、美貌の持ち主であることが断然多い。(一昔前は特に。)最近でこそ、イマドキのフツーなキャラっていうのが目立ってくるようになったが、それでも、確率的にいえば、カプのどちらかが美貌の持ち主って設定であるっていうのは、やっぱり、この業界、半ばお約束になっているのである。
「美しいと思うものを凌辱してしまいたい。」
「自分だけのものにしてしまいたい。」
という思いは、「美童をみて衆道に走った」昔も、
「イケメン(←死語?)を愛でる腐界の住人の方々の大勢いる」、今も、
変わらない不変のテーマなのかもしれないですねぇ。。。。
(実際、わたくし腐国ノ狂王も美人が大好物でありますから[黒ハート]
誰だって、キタナイよりはキレイが好きですもんね~。
「美貌」と「BL」は切っても切れない、お約束コンビなんですわな~。
そういう意味でも、美食家のみなみなさまにとって、美貌の宝庫であるBLの世界は、
やはり、病みつきになる世界であるのは、当然と言えば当然の話。
今後もこの業界。
悲劇の運命に弄ばれる「定番中の定番キャラ」、すなわち、「美貌キャラ」をドンドン排出してくれることに期待いたしましょ!



++オマケ。++
柳沢保明。
コレ、実在の人物。早速ググってご尊顔を拝見いたしましたが、???
本当に、そんなに稀に見る美貌の持ち主であったのか?(その画像からはうかがい知ることはできません。。。。。)
でも、将軍吉綱に深く関わっていたのは確かなようなので、やはり保明が小姓のころから、男色家であった吉綱に食されていたというのも、あながちウソでもないのかもしれない。
いや、腐国ノ狂王としては、そうであってほしい限りです。
これってもしかしてある種のリアル萌え?

まあ、あと、読んでいて思い知らされるのは、
栗本大センセ。実によく「下調べ」していらっしゃるな~。ということです。
「惣三郎」だって、司馬遼太郎の新撰組血風録の加納惣三郎を思わせる名前だし。
本書は、「衆道」を連想させる関連キーワードがいくつもいくつもちりばめられております。
そんな観点からも実は、楽しめるんですね、この作品。

もしかしたら、わたくしは勉強不足で気付かないだけかもしれませんが、実は、本書に書かれている心中モノのエピは、過去に歌舞伎や大作家様の時代小説などですでに周知の題材たちであるのかもしれません。。。。
ともなると、歌舞伎や近松あたりの古典にも手を伸ばしたくさせる作品ですな、これは。

そういった意味でも、半ば、史実に基づいたこのテのおはなしって、深いですよね。広がります。
だから、読む方としては、いろいろ「妄想」してみたり「深読み」してみたりと、文体に文句をつけつつも、
結構たのしめちゃった腐国ノ狂王でございました。

とまあ、こんな感じで、今回は、BL界の大御所大先生作作品をご紹介いたしました。


++最後に。3言。++
①「いたぶられる美童の数奇な運命」にソソられる方々にはオススメ。
②「地の巻」では、心中物の耽美というよりは、むしろ後半、猟奇的殺人のオンパレードでありますので、抵抗ある方があるかもしれませんので、くれぐれもご注意を。
③本作、どれをとっても本当にコユいエピぞろい。まさに「やば~い宝石の原石をあつめたパンドラの箱」のような作品集であることは、まちがいありません。たまには、イマドキのぬる~いBL作品とは違った世界をのぞいてみたいお方には、本書はイイと思います。文体からすると、万人受けする本ではありませんが、「お耽美」「美童」「心中」「悲恋」「猟奇的な愛」などのキーワードにピンとくるお方には、オススメですよ。




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